妹「お兄ちゃんのミルク……飲みたいな」兄「ああ、いいとも」

1 : 2021/11/22(月) 21:02:36.248 ID:3KR7ediQ0
妹「おにいちゃーん!」

兄「なんだ?」

妹「お兄ちゃんのミルク……飲みたいな」

兄「ああ、いいとも」

兄「搾るぞ、モー子!」ギュゥ…

モー子「モォ~」

兄「ほら、ミルクだ」

妹「お兄ちゃんのミルクおいしい~!」

兄「おいおい、ミルクを出したのはモー子なんだから、モー子も褒めてやらないと」

妹「ごめん、モー子!」

モー子「モォ~」

アハハハハ…

2 : 2021/11/22(月) 21:04:01.075 ID:FOuy0+KZ0
ソーラーパネルの自給自足のCM思い出した
3 : 2021/11/22(月) 21:06:38.091 ID:3KR7ediQ0
カランカラン…

客A「今日も二人とも仲いいねえ!」

客B「ミルク飲みに来たよ!」

兄「いらっしゃいませ!」

妹「こんにちは~!」

ミルク店を営む兄妹……。

二人の幸せな日々はいつまでも続くと思われた。

だが……

4 : 2021/11/22(月) 21:09:02.081 ID:6j6HRQ+I0
おとうとがゆぇえ。
5 : 2021/11/22(月) 21:09:37.174 ID:3KR7ediQ0
妹「お兄ちゃんとお買い物、楽しいな~」

兄「今夜はチャーハンにしような。……ん?」

ガンガン… ガシャン… ガガガガ…

兄「なんだ?」

妹「何か工事してるね。大きな建物が出来るみたい」

兄「もしかしたら、新しくスーパーでも開店するのかもな」

妹「だとしたら私たちの牛乳、仕入れてくれるかも! 楽しみだね!」

6 : 2021/11/22(月) 21:12:27.207 ID:3KR7ediQ0
カランカラン…

妹「お兄ちゃーん!」

兄「どうした?」

妹「大変だよ、あの工事してた場所に……とんでもない店が建ったの!」

兄「何が建ったんだよ」

妹「大型の……ミルク店!」

兄「なんだとォ!?」

7 : 2021/11/22(月) 21:15:03.126 ID:3KR7ediQ0
兄「どういう店なんだ?」

妹「ミルクを売ってて……カフェみたいなスペースもあるみたい!」

兄「ウチと全く一緒じゃないか」

妹「どうする?」

兄「行ってみよう。どんな店か把握しておきたい」

妹「そうだね、行こう!」

8 : 2021/11/22(月) 21:18:31.457 ID:3KR7ediQ0
兄「ここか……」

妹「緊張するね……」

ウイーン…

兄「自動ドアだ!」

妹「すごい! ハイテク!」

ウェイトレス「いらっしゃいませ」ニコッ

兄「あ、どうも」

ウェイトレス「何名様ですか?」

兄「に、二名で」

妹「お兄ちゃん、デレデレしない!」

9 : 2021/11/22(月) 21:22:19.282 ID:3KR7ediQ0
ウェイトレス「お好きな席へどうぞ」

兄「は、はい」

妹「広い! ものすごく広いよ!」

兄「ああ……軽く100席以上はある」

妹「どこに座る?」

兄「窓際に座ろう」

妹「お兄ちゃん、窓際好きだもんねー」

兄「外見られるからな」

10 : 2021/11/22(月) 21:25:23.171 ID:3KR7ediQ0
ウェイトレス「メニューです」

兄「どれどれ……」

兄「! こんなに沢山あるのか……」

妹「それにどれも安いよお兄ちゃん!」

兄「ああ、一番安い普通の牛乳は、俺の店の1/3以下の値段だ!」

妹「こんな値段で売られたら、ウチは太刀打ちできないよ!」

ハッハッハッハッハ……

兄「笑い声!?」

11 : 2021/11/22(月) 21:26:19.463 ID:XYSP1+o2r
兄がミルク出すしかないな
12 : 2021/11/22(月) 21:28:35.133 ID:3KR7ediQ0
社長「ハッハッハ……」

兄「誰だ!?」

社長「私はこの店の社長だ。初めまして」

兄「くっ!」

妹「いきなりトップの登場だよ、お兄ちゃん!」

社長「君たちのことは知ってる。この近くにあるミルク店の兄妹だね」

社長「今時珍しく、手で搾ったミルクで人気を博してるとか……」

兄「俺たちのことも調査済みってわけか」

社長「下調べは商売における基本だよ。商売敵の情報ならなおさらだ」

13 : 2021/11/22(月) 21:31:16.396 ID:3KR7ediQ0
社長「ウチには敵情視察で来たのかね?」

兄「まあな……」

社長「それで、ウチの店の設備や値段に驚いているといったところかな?」

妹「うぐ……」

社長「よかったら、この後ウチの工場を見学しないかね? すぐ近くにあるんだが」

兄「見学だと……!?」

妹「どうする、お兄ちゃん?」

兄「面白い、見せてもらおうじゃないか!」

14 : 2021/11/22(月) 21:35:31.419 ID:3KR7ediQ0
社長「ここがウチの工場さ」

兄「……!」

妹「……!」

ウイーン… ウイーン…

社長「全国各地の酪農家から送られてきた生乳が、ここで加工され、商品となるのだよ」

社長「作業はほぼオートメーション化されてるから、人件費もかからない!」

兄「くそっ!」

妹「これじゃ安くミルクを売れるわけだよ……」

社長「我々の凄さが分かったかね? ハーッハッハッハッハ……」

15 : 2021/11/22(月) 21:37:37.313 ID:3KR7ediQ0
シーン…

兄「お客が来なくなった……」

妹「うん、常連さんは相変わらず来てくれるけど……」

兄「それ以外のお客はみんな、安い向こうに行っちゃうな……」

モー子「モォ……」

兄「すまないな、モー子。あまり搾ってやれなくて」

妹「どうしよう、お兄ちゃん。このままじゃお店潰れちゃうよ!」

兄「うーん……」

16 : 2021/11/22(月) 21:40:28.719 ID:3KR7ediQ0
カランカラン…

社長「ハーッハッハッハ!」

兄「お前は!」

妹「大型ミルク店の社長!」

社長「ここへ来たのは他でもない。君たちに話があってね……」

兄「なにっ!?」

妹「なんの話よ!」

兄(予想はつく。商売の邪魔だからここから立ち退けだとかいうに違いない……)

妹(私はどんなことになってもお兄ちゃんについていくんだ!)

17 : 2021/11/22(月) 21:44:28.462 ID:3KR7ediQ0
社長「君たちを我々の傘下に迎え入れたい」

兄「え」

妹「ウチの店を潰したいんじゃないの?」

社長「まさか。手搾りのミルクなど、ウチでも扱ってはいないのでね。この店はこのまま残したいのだ」

社長「我が社を通じて、君らの店の宣伝はガンガンするし」

社長「むろん、ウチのブランドになってもらうわけだから、それ相応の金は払う」

社長「どうだね、引き受けてもらえないかね」

兄「願ってもない条件だ!」

妹「お兄ちゃん、この社長さん、案外いい人だったね!」

兄「ああ!」

18 : 2021/11/22(月) 21:45:25.090 ID:WCPWd5QT0
ハッピー・エンド
19 : 2021/11/22(月) 21:47:13.452 ID:3KR7ediQ0
社長「じゃあ、話を受けてくれるね?」

兄「いや……ここで屈したら、なんか負けのような気がする」

社長「へ?」

妹「さすがお兄ちゃん!」

社長「なぜだ!?」

兄「分からん。自分でもよく分からんが……とにかく勝負だ!」ビシッ

社長「勝負って一体どんな……」

兄「もちろん、ミルク勝負だ!」

20 : 2021/11/22(月) 21:50:05.244 ID:3KR7ediQ0
社長「具体的にどういう勝負をするのだ?」

兄「ランダムに10人ぐらいの人を集めて、お互いのミルクを飲んでもらう」

兄「そして、どっちのミルクが美味いか判定してもらうんだ!」

社長「ふむ、シンプルで面白そうだ。その勝負、受けて立とう! もし負けたらこの町から撤退してやる!」

妹「やった! この人ノリがいいよ、お兄ちゃん!」

兄「ああ、撤退までは誰も要求してないのにな」

社長「飲食物の対決というのはだいたいこういうものさ」

21 : 2021/11/22(月) 21:53:11.120 ID:3KR7ediQ0
数日後――

ワイワイ… ガヤガヤ…

妹「人が大勢集まったね」

兄「なにしろこの町にはろくに娯楽がないからな」

妹「みんなヒマなんだねー」

モー子「モォ~」

兄「頼むぞモー子! お前のミルクに店の命運はかかってるんだ!」

モー子「モォ!」

22 : 2021/11/22(月) 21:57:15.269 ID:3KR7ediQ0
司会者『ただいまよりミルク対決を始めます!』

司会者『それではさっそく、30分間の時間を設け、ミルクを作って頂きます!』

司会者『さあ、大型ミルク店の社長から拝見しましょう!』

社長「作るもなにも、ウチは工場で作った製品を出すだけさ」

司会者『早い! なんの盛り上がりもなく、いきなり出来てしまいましたァ! 尺が余りすぎる!』

司会者『しかし、自社製品への自信のほどが伺えます!』

23 : 2021/11/22(月) 22:00:27.696 ID:3KR7ediQ0
兄「よーし、モー子。搾るぞ!」

モー子「モォ~!」

兄「うおおおおおおっ!」ギュゥゥゥゥゥ…

モー子「ンモォォォォォッ!」

妹「出た出た! 出てきたよォ!」

兄「今日もいっぱい出たな」ナデナデ

モー子「モォ……」

兄「俺たちも完成です!」

司会者『兄妹のミルクが完成したァ!』

ワァァァァ…

24 : 2021/11/22(月) 22:02:10.756 ID:XzC5HYuo0
殺菌くらいしろ(´・ω・`)
25 : 2021/11/22(月) 22:03:36.379 ID:3KR7ediQ0
司会者『それでは、10人の審査員の皆様にさっそく実食ならぬ、実飲をしてもらいましょう!」

司会者『さあ、AとB、二つのコップに入ったミルクを飲んでみて下さい!』

審査員A「それではいただこう」グビッ

審査員B「いただくわ」ゴクッ

審査員C「いただきまーす!」グイッ

グビッ… チビ… ゴクゴク… ゴキュ… ニュポ…

司会者『10人とも、ミルクを飲み終わりました! いよいよ判定でぇす!』

26 : 2021/11/22(月) 22:07:02.827 ID:3KR7ediQ0
司会者『おいしかった方の札を上げて下さい! 判定は!?』

B B B B B B B B B B

司会者『なんと全員Bィ! Bは……兄妹チームのミルクでぇす!』

兄「よし!」

妹「やったぁ!」

社長「く、くそっ……!」

27 : 2021/11/22(月) 22:07:35.733 ID:XYSP1+o2r
ニュポってなんやねん
28 : 2021/11/22(月) 22:10:19.008 ID:3KR7ediQ0
妹「さすがの量産ミルクも、お兄ちゃんとモー子が作ったミルクの味には敵わなかったね!」

社長「おのれ……!」

兄「お前のミルクなど、俺のモー子のミルクに比べたら……おいしさは半分程度!」

兄「そう、“モー子・半”だったんだ!」

社長「ぐううっ……!」

社長「そうか、いかに安くミルクを作るかに囚われていた私は、味は二の次になっていた……」

社長「加工の工程も衛生面さえしっかりしてれば良し、という考えだったしな……。酪農家の方々に申し訳ない」

社長「完敗だ……大人しく町から撤退するよ……」

29 : 2021/11/22(月) 22:13:17.183 ID:3KR7ediQ0
兄「いや、撤退する必要などない!」

社長「え」

兄「お前の会社のサービスやミルク量産体制は素晴らしいものがある」

兄「この間の話、ぜひとも受けたい!」

妹「さすがお兄ちゃん!」

社長「えぇ……じゃあなんで勝負したの?」

兄「とりあえず、ウチのミルクはすごいってのは示したかったから」

妹「お兄ちゃん、そういうとこあるよねー」

兄「へへっ、まあな」

30 : 2021/11/22(月) 22:17:05.830 ID:3KR7ediQ0
社長「それじゃあ、我が社はこの町に留まりつつ、君たちの店を援助していくことにしよう」

社長「よろしく!」

兄「こちらこそ!」

妹「よろしくお願いしまーす!」

モー子「モォ~」

それからというもの、この町は社長の力によって、ミルク産業で栄えることになる。

兄妹の店も、勝負に勝ったことがいい宣伝となり、大いに繁盛するのだった。

31 : 2021/11/22(月) 22:20:07.371 ID:3KR7ediQ0
……

妹「ただいまー、ミルクの配達行ってきたよ!」

兄「お帰り、今日もたくさん売れたな!」

妹「うん!」

妹「疲れて喉が渇いたから、お兄ちゃんのミルク……飲みたいな」

兄「ああ、いいとも! たくさん飲ませてやる!」

モー子「モォ~!」

おわり

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