値上げの波が落語演芸場やミュージカル料金などにも。物価高や演者のギャラ維持のため

いまだ収まらない物価高は、演劇や伝統芸能の世界にも影を落としている。

端的な例が、今年10月に上演予定のミュージカル「エリザベート」のチケットだ。平日のSS席が2万円（土日祝日、千秋楽は2万1000円）と、歌舞伎以外の演劇チケット代で初めて2万円を突破した。さらに“庶民の娯楽”の代表格、寄席にも“値上げの波”が。
落語ライターが解説する。

「今年6月、東京・上野の鈴本演芸場や浅草の浅草演芸ホールの木戸銭が、500円アップの3500円に値上げされて話題になりました。続いてこの8月には同様に新宿末廣亭も3000円から3500円に値上げされます。辛うじて池袋演芸場は3000円に据え置いていますが、都内四つの落語定席のうち、3カ所が値上げする事態です」

国民は高騰する電気やガス料金、下がらないガソリン代に悩まされているが、

「どの寄席も営業は、昼の部が正午ごろから16時過ぎまで、夜の部は17時ごろから20時半くらいまでと、連日8時間を超える長時間にわたります。当然ですが、客が多かろうと少なかろうと、夏場は冷房、冬場は暖房をフル稼働しており、その電気料金はバカになりません。今年は光熱費が、昨年の同じ頃と比べて1.5倍以上に増えています。あれこれ異常な値上がりが、寄席の経営を圧迫しているというわけなんです」

人気落語家でも出演料は1万円
加えて、いまもコロナ禍の後遺症があるという。

「営業の自粛が課せられたのは寄席も例外ではありませんでした。意外に思うかもしれませんが、どの寄席も経営母体は“個人商店”と言っていいような零細企業。一時はすべての寄席が閉場の危機に陥りました」

事態を重く見た落語協会と落語芸術協会は、寄席の救済資金を捻出する目的でクラウドファンディングを実施した。

「集まった額はおよそ1億円。それを都内の寄席で分配しました。おかげで何とか危機的状況は脱しましたが、肝心の客足はコロナ禍前に比べると思うようには戻っていません。どの寄席も、厳しい経営が続いているのは変わっていないんです」

弱り目にたたり目。そこに、昨年来の物価高が追い打ちをかけているという状況だ。

「連日、寄席では落語をはじめ、漫才、講談、奇術、曲芸など30人近い芸人が出演します。彼らに支払われる出演料は、その日の観客の入り、つまりは売り上げの額に左右される。加えて芸人たちには芸歴などによる“格”があり、それをもとにした“割り”と呼ばれる分配の仕組を基にギャラが決まるのです」

とはいえ、どの寄席も客席数は大入り満員となった場合でも300人程度。しかも、ギャラの額も決して多くはない。

「全国的な知名度を持つ人気の落語家でも、1回の出演料は1万円ほどで、若手になると、それこそ数千円という世界です。ただでさえ少ない芸人への支払い額を維持しようとすれば、原資となる入場料を上げるしかないんです」

もっとも、寄席側は入場料こそ値上げした一方で、同時にさまざまな割引の工夫を凝らしている。

「既存の学生割引のほか、コアなファンが多い65歳以上の高齢者を対象にしたシニア割があります。さらに18時以降に入場する場合や中入り後なら夜間割引もあるんですよ」

なんとも世知辛い世の中だねェ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/66599fb671b18a13a325a24f7929917dc7398f0c